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平成24年9月11日

今朝の中日新聞に、江戸時代の染色用型紙の記事が載っていました。
1880年~1910年にかけて、江戸時代からある染色用型紙が、大量にヨーロッパへ流出したことが、日本女子大の教授たちの調べで判った、との記事です。
この時期は、ヨーロッパにアールヌーボーやアーツ&クラフツの創生と重なり、あの有名なエミール‐ガレやウイリアム‐モリスは、明らかにこの染色用型紙を眼にしたはずです。
浮世絵が明治時代に欧米に大量に渡った事実は有名ですが、それを見たロートレックやゴッホは、絵に対するインスピレーションと共に、日本と言う国に憧れを抱いたようです。
それにしても、染色用型紙16000点とか、7000点とか、これはイラストの世界では、大変な財産のはずです。(2か国の博物館に所蔵されている)
日本人は、自らの持っている財産価値を知らずに過ごしてしまっているのでは?
以前、京都に若い女性の染色師が頑張っていることをNHKで放送されていました。
彼女の先祖は代々染物師で、何よりの財産は、「先祖が残してくれた1000点を超える型紙だ」と彼女は語っていました。
彼女は、国内だけでなく、海外でも高く評価され(むしろ海外評価の方が高い)今後の活躍が期待される現代アート‐アーティストの一人です。
日本の経済凋落が叫ばれる中、さらに3.11以降、経済指標は悪化を辿っている。
経済の基本だった貿易黒字も、原発の全面停止を想定し、地下資源の高騰を受けて維持が難しくなってきた。
経済評論家や大企業経営者の多くは、日本の将来を危ぶむ声を発している。
その根源は、明治時代から続く「日本には資源が無く、外国から資源を買い、加工して外国に売る」<加工貿易立国>の姿を追っかけているのです。
アメリカは、19世紀後半から20世紀前半には、貿易黒字国でした。
イギリスは、それ以前の産業革命以降、約100年間貿易立国でした。
イギリスは<イギリス病>つまり、世界一の国が陥る目標喪失からくる倦怠感が若者を中心に広がり、世代間格差を生み、家族の対話が途切れ、国力を落としました。
アメリカは、理想を掲げながら、ベトナム戦争や、各地の内戦に介入して、進路を失いながら、戦争が国内経済に欠かせない存在になってしまいました。
アメリカは、20世紀の後半には、今の日本より厳しい状況でした。
かつて、鉄鋼王カーネギーが「鉄は国家なり」と豪語したアメリカの鉄鋼業界は、日本の製鉄会社にとって代わられ、家庭用TVを生み出した家電業界は、ことごとく日本のメーカーに駆逐されてしまい、1970年代には、米国製のTVは無くなってしまうのです。
しかし、その時すでにIBMがコンピュータを製品化、20世紀後半のコンピュータ時代の幕開けを告げていました。あっと言う間に世界一の企業になります。
その巨大企業IBMも一学生たちが考えたPC(パーソナルコンピュータ)MACによって市場を持って行かれます。
さらには、コンピュータを動かすソフト会社(マイクロソフト)にその場(世界一企業)
を譲ります。
ところが処が、MACを生んだアップル社が開発した携帯型コンピュータに電話機能を持たせたアイフォンやアイパッドが世界中に広がり、世界一企業になるのです。
一つの産業が衰退しても、次に繫がる新たな産業を生み続ける、それがアメリカです。
イギリスは、産業革命から200年、金融と言う新たな分野を手に入れ、ロンドンの一角に、<シティー>を造り、世界中の金を集めることを実現しました。
保険や銀行の概念は、元々イギリスから始まったのですから当たり前かもしれません。
二つの国が持っている特性を具現化した結果と言えそうです。
では、日本はどうか?
私の考えは、「日本人らしく」です。
「なんだって」と言った声が聞こえてきそうですが、<シティー>を造り金融で生きようとするイギリスも、次々生み出す新しい概念を元に産業を生み出すアメリカもそれぞれ「らしい」と言えることです。
<神様>さえ契約を交わす民族や、ルーツを自ら造ろうとする国家国民とは、今更同じ発想を日本人が出来るとは思えません。
それは、江戸時代、270年に渡って鎖国をすることで、日本文化がまるでお酒を熟成発酵させるがごとく、醸し出すことになったのではないか。
その時期に生み出された日本独自の文化は、その後の世界に多大な影響を与え、今なお一切の古びも無く、世界に発信出来る物であること。
例えば、日本の家には何処にでも有る<家紋>は、アメリカには無く、ヨーロッパにも貴族だけに許された特殊な<物>である、という事実。
そんな物が何になるのか?の声が聞こえてきそうですが、デザインは<ソフト>です。
サムスンとアップルの訴訟は、正にこの争いでした。
特許と言えば、とかく難しい<技術や理論の世界>と思われがちですが、アップルは、<形>こそ特許であり、その価値は、「10億ドル以上(8000億円)ある」と裁判所が認めたのです。
新聞の記事は、「型紙は<職人の道具>であり、芸術ではない」と書いていましたが、ここに日本人の<価値知らず>が見て取れました。
かつて明治時代、「浮世絵は版画なので価値が無い」ものとして扱われ、なんと<陶器の包み紙>としてヨーロッパに輸出されました。
ヨーロッパ人は、陶器よりも<浮世絵>に驚いた、と言います。
こんなものを惜しげも無く包み紙にしてしまう連中は、「価値を知らない奴か、もっと優れた物が溢れていて」なのか?と。

つづく

by kzhome | 2012-09-19 21:31 | 社長の日記  

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