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『温故知新の家づくり』 第3回 「デザイン」という価値

家の価値を伝える最も大切な要素はデザインです。

愛知万博の時作られた『さつきとメイの家』は、なぜ残されたのでしょうか。
ディズニーランドのシンボルが、なぜ世界中『お城』なのでしょうか。
日本中にある『城』で明治以前から残っている建物は殆どありません。では、なぜ多くの『城』が太平洋戦争後建て直されたのでしょうか。

それは、私たちが後世に残したい、あるいは、心の中にイメージされた懐かしいもの、失いたくないもの、つまり『アイデンティティー(共通認識)』があるからです。

その源は、DNA(遺伝子)であったり、生後に刷り込まれたものであったりする訳ですが、「美しい」と感じる美意識が共通しています。

それは、たまたま日本人が誤解する「綺麗な」ものではなく、景観的な「美」です。イタリアのフィレンツェはその美しさから、世界遺産にもなっていますが、実際の建物は500年の風節に耐え、外壁の表面など見るに堪えません。

京都の町家の美しさは、何軒も続く面格子にありますが、新しいものよりも古くなって少し角がとれたり、木の色が灰褐色になったりしたもの方が価値を増します。

つまり『建築のデザイン』とは、出来あがった時が最高ではなく、歳月を経るごとに価値が増すものを言い、一過性の流行や自然素材でない部材では、その実現は不可能です。
家を長持ちさせることが、耐震性能や強度のみに偏った超長耐久住宅とか200年住宅は、単なる『箱もの』としての発想であってはなりません。

また、出来た瞬間の見た目のかっこよさや確かなバックボーンを持たないデザインの家を、欧米では『ケーススタディーハウス』と呼び、建てられる地域を限定して住宅地の景観に違和感を与えないように配慮しています。

日本の建築学は、関東大震災と東京大空襲で、耐震性、耐火性能、防火性の研究に偏ってしまい、一級建築士の資格を得るための試験も大半が複雑な計算式です。
中越地震しかり、能登半島沖地震しかり、柱の太さや大工の腕ではなく、確かな計算に基づく性能の確保があれば、殆どの地震に対応出来ているのが、現在の建築基準法です。

問題は、デザインです。

今の日本の住宅には、根本的な欠陥(あえて言います)があります。ハウスメーカーが出現して、かれらの都合の好い工場生産し易いようにデザインしてきました。
住宅資材メーカーもそれに倣い、大工工務店用の部材を〈共通化〉してしまいました。
今では、どれがハウスメーカーの建物で、どれが大工工務店なのか、一般の方では判らないぐらいです。

by kzhome | 2008-11-14 22:19 | 社長の日記  

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